いつか、届く、あの空に。 (Lump of suaer)


──この街には、決して越えられない「雲」がある。
ずっとずっと、夜空の輝きを遮ってきた雲がある。
だから、星空が遠すぎて。
小さな願いは、いつしか大きな憧れへと変わっていった。

雲に包まれたこの街で。
満天の星空を夢見る少女たちがいる。

──これは、柔らかくゆるやかな日々に、淡い夢を見るお話。


──どこまでもどこまでも──
それは、空が青く澄み渡っていた日の朝。

巽の家を出た策は、この街へとやってきた。
空明市。
まるであの空を切り取り、名刺代わりに差し出されたような名の。
──どこか優しく頬を撫でていく、この街の空気。

「お前は好きに生きなさい」
あの厳格な祖父にそう告げられた時、策は自分が巽の者として失格した事を理解した。
わかっていた事だ。
ずっとずっと昔から、わかっていた。
それでも受け入れてしまう事はできなくて、諦めきれなくて、
無様に努力だけを続けてきた。
父のように。
兄のように。
自分にだって、巽の家に生まれついた者が持っていて当たり前のものがあるのだと、
認めて欲しかった。

けれど今、自分はここにいる。
祖先が住んでいたという、古ぼけた屋敷が目の前にある。
「巽の者を代表して、誰かがあの街に行かなければならない」
祖父がそう告げた時、ろくに内容も確認せず、策は話に乗った。
それが、あの家から出る理由となるのなら。

この街の優しさに少しだけ甘えながら。
新しい生活が始まるのだと。
そう決心して、これから住まう事になる屋敷の門を潜った──

これは、柔らかくゆるやかな日々に、淡い夢を見るお話。
……そして、ゆっくりと。
ゆっくりゆっくりと、

雨が降り積もっていく物語。

ジャンル:ノベル式天体観測シネマNVLΣ(゚д゚;)<ウソツキー
前半はごく普通の萌え学園ものなんだけど、後半でガチな伝記物に……
というか、後半戦の主人公の造形がまんまFateだなぁ。これ。

物語当初から、あちこちに伏線を張りまくっておいて、3種類あるルートを全部制覇することで物語の背景が理解できるっていう手法を採っているんで、ある意味で1本道。(結局全ルート制覇しないとすっきりしないから)
そして膨大に長い。Fate並みとは言わないけど。
しかも、物語の中の情報だけでははっきりしないことが多くて、かなりの考察を必要とします。→考察サイト*ネタバレ

また、シーン単発で行くとシリアスもコメディもかなりツボに嵌ったのですが、いかんせん場面転換が急すぎるのと主観視点の"主観の人"が頻繁に入れ替わるので、今読んでいるのが過去/現在/あちら/こちらのどのシーンなのか本気で見失います。
一部は、読んでいるプレイヤーが知らない間に主観を変えてのミスリードを狙ったような部分もあるんだけど……たぶん、そっちが偶然で、単に場面転換の書き方が上手くないだけだ。これ。

しかし、個人的には、スーパー主人公な伝記物は風呂敷の広げっプリ含めて結構好きなので面白かったけど、この内容で↑のストーリー紹介じゃあ詐欺だわ。