シンフォニック レイン(工画堂スタジオ)


雨が止むことなく降り続ける街ピオーヴァは、音楽家を夢見る若者達が集う、音楽の街でもありました。
クリス=ヴェルティンは、恋人のアリエッタが暮らす生まれ故郷の田舎街から遠く離れ、
彼女の双子の妹トルティニタと共に、街のシンボルであるピオーヴァ音楽学院に通っていました。


魔導奏器フォルテールの奏者、フォルテニストになることを目指し、
クリスがこの街に来てから2年以上の月日が流れ、季節は冬……。
あと数ヶ月で卒業を迎えるクリスは、フォルテール科の卒業課題として、 一月半ばの発表会で、
歌唱担当のパートナーと共に、 オリジナル曲を合奏しなければなりませんでした。


しかしクリスは、未だにそのパートナーさえ決めようともせず、ただやる気のない毎日を送り続けていました。
週に一度届く恋人からの手紙と、
この街に引っ越して来たときに出会った部屋の居候、身の丈10センチほどの小さな音の妖精フォーニが、
彼の世界のすべてでした。


 雨――いつまでも、止むことなく降り続ける雨。


雨音が奏でるメトロノームにのせて、魔導奏器フォルテールの音色を響かせましょう。
クリスの奏でる音色と、音の妖精フォーニの歌声が重なり、響き渡る時、
何かが起こるのでしょうか?


……さぁ、妖精の歌を奏でましょう。


PC専用(?)で一般ゲームで萌えゲーという、昨今のPCソフト業界で唯一と言っていい存在の工画堂スタジオ、音楽ゲー最新作です。
音楽というのは、そのときそのときの演奏者の心理状態で音が変わる(らしい)のと、集団で演奏する物なので場の盛り上げ方などが簡単でシナリオが書き易いと言った利点がありますが、あまり氾濫してないですね。
…やっぱり、テーマ的に音楽にこだわったりすると経費がかかったり手間がかかったりするので、いまの多品種少量生産式の業界では敬遠されるのかなぁ。
(「音楽ゲーならこれくらい売れる」って計算式が確立されていないって言うのもあるかも)


シナリオの表の本筋は、彼女持ちの主人公がパートナー候補の3人に乗り換える浮気ゲー…というと身も蓋もなさ過ぎですが。
初期3人エンド→3人のうちの某人の視点の裏シナリオ→最終シナリオ…の流れで行くのですが、初期3人のシナリオではあっけなく現彼女から別れの手紙が送られてきてあっけなくくっつくので、なんつーか、あっさりしすぎているだろあんたら! とツッコミが。
後のシナリオクリアすると、それも理由があることがわかるのですが。
(しかも、初期3人のシナリオはそろいも揃って大逆転鬱エンドだし)


私ゃWhiteAlbumの時点で浮気ゲーは完全に合わないと判断して投げ捨てた人間なので、最初の3人はひたすら苦痛でした。
が、後の2本は良い出来です。


裏シナリオは某ヒロイン視点で語られるんですが、それを読んでやっとヒロインの行動の根本原理がわかったというか。
いや、本気で私が主人公でこのヒロインみたいな行動取られたら全力で引くと(主人公視点では)思ったけど、視点変えてみると共感すらできるかなぁと。


で、最終シナリオは終始まったり。
いや、私がパッケージ見て本当にこのゲームに求めていたのはこういうまったり感だったのに、実際ここまでたどり着くのは修羅の道という理不尽さ。
待たされただけあって出来は非常に良く、特にグランドフィナーレの演奏シーンが…


冒頭に書いた通り、既にニッチと言うにも極まった市場ですが、工画堂にはこの市場でがんばって欲しい物です。